第6章 中医学からみた頭痛のタイプと治し方より症例を1つあげておきます。
症例
女性、29歳。2002年3月15日初診 翻訳業(パソコン入力)
※ この症例は、現病歴、随伴症状、治療経過をご本人が持ってこられたので、そのまま掲載させて頂きました。
現病歴
3、4ヶ月前から両側頭部がバンドか何かで締め付けられるような頭痛が始まりました。特に、つねに左後頭部頭が痛くおもりが付いている感じで、触ってみると塊があり、血流が詰まっている感じがよく分かります。ひどくなって脳出血でもおこして倒れるのではないかとこわくなったりします。
立つとくらくらとめまいのような感覚を覚えます。自分でグーで押してみると少し楽になりますが、一時しのぎです。押してみると柔らかいみかんのようにボコボコした感じで、押しつづけると鼻の辺りにツーンときます。首、肩こり(特に左肩甲骨)との症状が合わさって悪化すると気分が悪くなることもあります。
首の凝りは鎖骨から耳の下までで、耳の下が凝り固まった感じがします。頭部全体の頭痛は締めつけられるようなもので、ガーン、ガーンと繰り返しがしばらく続くが数分でやみ、忘れたころにまたきます。一日数回で、薬を飲むほどではありません。
特に仕事中、パソコンに向かっているときと、就寝時に横になったときに多く現れます。横になると、頭のなかで重いものがゴロンと動く感じで、その動きに合わせてガ−ンと痛みがひびきます。同様に後頭部も痛みます。
来院半年前から自宅近所の整骨院に通院していましたが、一時的改善のみで終わってしまいました。効き目の持続期間がどんどん短くなり、この頃は、次の日には症状が戻ってしまうようになっていました
随伴症状
他の症状として全身のけだるさ、疲労感、足のむくみ、だるさがぬけません。ほぼ一日中手足が冷たく、疲れたときや曇り、雨の日には腰痛があります。腰痛は10年以上前からあります。
すぐ眠れますが、いくら寝ても寝たりない気がします。一日中眠くてだるさが続きます。夜早く寝ても、朝は起きるのがやっとで何も食べられない状態です。紅茶を少し口にするくらいがやっとで、食べる気すら起こりません。
毎朝、無理やり上体を起こして半分寝床の中で10分から15分もうろうとした状態で過ごしてからでないと、起きられません。
頻繁にトイレに行きますが尿量は少ないです(日に10回以上。間隔は一時間以内のこともあります)。
生理は量が多く、生理前には腹部と胸部の張りがあります。胸部の張りは痛くて走れなかったり、下向きに寝ることができないこともあります。
左側の肋骨部(乳房の上と下側)がズキッと痛みます。息が詰まる感じがして、特に就寝時に多いです。数秒内に収まりますが、日に1〜2、3回だったのが、だんだん増加して5、6回前後になってきました。痛みの度合いも増してきました。息を潜める感じです。
全体的に疲れやすく、体質改善も希望して来院しました。
1月から3月は毎月、資格試験を受けていました。仕事後や休日は受験のために勉強をする毎日が続きます。試験前や試験日当日は緊張から下痢や食欲が減退します。
受験後はホッとするものの、間違った箇所ばかり思い出したり、試験結果が気になったりして気持ちが前向きになれません。あれもしなきゃ、これもしなきゃ、このくらいできないでどうするのかなどと、自分で自分にどんどん負荷をかけ、プレッシャーを感じてしまいます。こういうときにはドキドキと動悸を感じることが多いです。
病状の考察
全体の証候分析
肝気(かんき)が鬱滞(うったい)して疏泄(そせつ)が失調し気滞(きたい)になります。血(けつ)に影響して血C(けつお)となり、水(すい)に影響して湿(しつ)を生みました。さらに、肝(かん)気犯脾により脾(ひ)は肝(かん)のバックアップを受けられなくなり、脾気(ひき)が低下し、気(き)血(けつ)の化生の不足を引き起こしました。
脾(ひ)の昇清(しょうせい)作用(さよう)が失調して、清(せい)陽(よう)が十分に昇らず、脳や全身の栄養不足に見られる症状をまねきました。
長期の肝(かん)鬱(うつ)による慢性的な血C(けつお)の状態となり、筋肉を栄養できずに筋や血管の収縮を引き起こしました。その結果、締め付けられるような慢性的な頭痛となりました。
肝鬱(かんうつ)の長期化で肝火(かんか)をまねいたときは、血管性の頭痛となるのです。
さらに肝火が心に影響して心血が凝滞し、心血C阻をまねきました。
臓腑弁証
肝気鬱結(かんきうっけつ) 肝火上炎(かんかじょうえん) 心血(しんけつ)C阻(おそ)
治法(ちほう)
疏肝理気(そかんりき) 清肝瀉火(せいかんしゃか) 養血活血(ようけつかっけつ) 養心通(つう)絡(らく)
選(せん)穴(けつ)
太衝(たいしょう) 合谷(ごうこく) 内関(ないかん) 心兪(しんゆ) 行間(こうかん) 中(ちゅう)(かん) 足
三里(あしさんり) 脾兪(ひゆ) 膏肓(こうこう) 膈兪(かくゆ) 風池(ふうち) 肝兪(かんゆ)
温灸
中(ちゅう)(かん) 脾(ひ)兪(ゆ) 足(あし)三(さん)里(り)
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治療経過
第1回(3月15日)
両後頭部、前頭部両側が痛み、一日中重い感じがしてこめかみを押さえることが多いです。就寝時には左後頭部が痛みます。左前頭部の頭痛は3〜4分のものが日に数回あります。
左の肩甲骨、腰が痛みます。首の凝りは少し楽になりました。
第2回(3月20日)
2回の治療で身体は全体的に軽くなった感じで、足のむくみも軽減しました。頭痛は前と後ろで1、2分が日に1〜2回ぐらいです。少し腰痛があります。手の冷えは軽減したようです。足はまだ冷えています。舌先に黒い点、横に赤いあとがあります。
第3回(3月22日)
朝は起きやすくなってきました。頭痛と左の胸に軽い痛みがおきるようになりました。
第4回(3月26日)
だるさ、頭痛、凝り、疲労感、眠さがぶり返してきて、カゼを引きました。のども腫れ、鼻水、鼻づまりがあり、食欲も減退しました。鍼灸でカゼの治療を受けました。一連の試験が一段落して張っていた気が抜けたようでした。
第5回(3月29日)
食欲が少し戻り始めました。鼻水、のどの腫れはまだ少し残っています。頭がくらくらし、頭痛もします。
第6回(4月1日)
体調良好と感じるようになってきました。肩も軽く、仕事後に少し肩こりが残るくらいで、頭痛なしの日もでてきました。左右前頭部の痛みは軽減し、時間も頻度も減りました。後頭部の頭痛、張りはかなり改善してきました。凝りがでてきてもほぐせるほどに回復してきました。
右腰痛があります。
肋間の痛みは一日に0〜3、4回。毎回3、4秒前後。左と右側にわけて前後から起こります。
第7回(4月5日)
体調は良好で、肋間の痛みはありません。
この間に生理がありましたが、生理前の胸部の張りはまったくなく、量が普通程度になり、ネバネバがなくなり、生理が軽く感じられました。
第8回(4月10日)
少しだるさと肩こりがあるくらいですが、特に気になるほどではなくなりました。帰宅時に一度だけ肋間(ろっかん)に痛みがありました。
第9回(4月16日)
頭痛はほとんどなくなりました。
肋間(ろっかん)に痛みが少しありました。痛みの度合いが一度軽減し、気にならない程度にまで回復したあと、再開しました。朝夕に1〜2、3回ずつ。みぞおちも時々痛み、ストレスを感じたときによく出ます。前日に2、3回きつめの痛みがあり、気分も悪く、気持ちも沈み、この日の午前中は、仕事はできるものの、息苦しい感じがして心配になり、治療を受けてリラックスをはかりました。
第10回(4月24日)
前回の治療後、肋間痛(ろっかんつう)はなくなりました。
頭痛もほとんどありません。
肩や首の状態も順調です。首筋にはまだ少し張りを感じますが、肩や後頭部は塊がとれたと感じられ、仕事などの同じ姿勢を続けたために張ったあとには軽いストレッチなどでほぐせるようになりました。
ストレスを感じたときなどにまだ不整脈になっていることは自覚しています。
体調を管理し、凝り固まるのを未然に防ぐため、通院を続けています。
第13回(5月20日)
これまでは土日はぐったりとして家で寝て過ごすのが私にとっては当たり前のことでした。外に出て、何かをするなどということは考えられなかったのですが、休日に外に出て仕事さえできるようになりました。今までの私には信じられないことです。
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